偉人の書いたコラムに、若者の内向き思考を嘆く一節があった。経済新聞の最終ページにあるコラムだ。今の若者は国内の安全なポジションを奪い合うばかりで、新境地を拓く気概はどこへ行ってしまったのか(意訳)という、日本のサイエンスの衰退を憂う文章だった。
一方で、スポーツ面にはJOCがパリ五輪に向けて選手のメンタルヘルス対策への取り組みを強化、といった記事がある。戦い続ける人たちは戦い続ける人たちで、いつもメンタルをごりごり削られる環境下にある。選手のウェルビーイング、という一文がやけに記憶に残った。
自分を削って戦わずとも幸せな生活が存在することを私たちは知っているし、そもそも、世界の頂点で競い合う人たちとは肉体も精神も頭脳も持っているものが違うのでは、とふんわり思っている。ふんわりとしか想像できないほど、競い合う人たちと私の日常の間には、深く深い断絶がある。
戦い続けるには、専門家の力を借りないとウェルビーイングできないほど環境は厳しいが、戦わない日常は衰退だ。目的地はどれだろうか。ハードモードな人生である。