腹を満たす、舌を肥やす、目を養う。
自己研鑽や成長は「よいもの」とされがちだけれど、一度満ちると、不足が気になるようになってしまう。
満たされていない状態は、つらい。
美味しくない食事やつたないあれこれを摂取するのは、つらい。
完璧な正方形だけが美しいわけではなく、欠けやゆがみが当たり前にあるのが当たり前なのだと思う。正解は一つではない、完全は唯一の価値じゃない。思っているのに、許容できない。
心のこもった料理が美味しくなかった。もらったプレゼントがダサかった。そんなことは考えたくなかったと思う。
満たされる経験を重ねるたび、基準値が上がり許容範囲は狭くなる。もしかすると自分を満たすべきではないのかもしれないし、成長と称して世界を広げるのは「幸せ」ではないのかもしれない。
研鑽と称して「よいもの」を知るたびに、不足ばかりが目についてしまう。
整えられた完成形を、正しいものを、レベルの高さを。
そんなことは考えたくなかった。
来年はもう少し、つたなさを含めた物事を愛せるようになりたいと思う。年が明ける。