赤子の頭を撫でるように

忘年会の席で、「歯磨きをしすぎて知覚過敏になった」という話を聞いた。

「ゴシゴシ磨くと良くないんだよ、歯は、赤子の頭を撫でる力で磨くんだ」と人生の先輩が言っていたので、なるほどなぁと思う。帰宅して歯ブラシを握るとき、ナイロンの毛の先にふわふわで頼りない骨格の赤ちゃんの頭を思い浮かべる。歯磨きという義務的な日常の動作において、はっとするほど趣のある表現だった。

今日は親切なお姉さんに、炭酸水にくし切りのレモンを絞って貰えて嬉しかった。車だからと炭酸水を頼んだら、「レモンを用意しましょうか?」と店員さんが尋ねてくれた。何かのサワー用のレモンがきつく冷えた炭酸水に種ごとダイブしていき、予想外の提案や思いがけない優しさが、こんなに心に染み入る年末。

うるしはいよいよ青い葉が全て落ち、春になったらちゃんと再び芽吹くのか、試練の冬が始まります。