
新年一日目を山で過ごした。どこもかしこも混んでおり、みんな元気だなあと思った。カメラを持って過ごしたものの、どうもピントが合ってくれない。
祈りの場所がいくつもある山には、「ここを潜れば新しい人生が拓かれる」といわれるパワースポットがあった。もちろん大喜びで潜ったが、悠久の時を過ごしたであろう大木と巨岩に囲まれていると、一発逆転的な幸運という響きには、あまり説得力がない。
植えた木が一晩で巨大になることはなく、土くれは明日も土くれのままだ。ソテツの木肌にひし形が刻まれているのはその一つ一つに葉が育っていた名残であるし、クモの巣は一本の糸を張り巡らせてできている。
一発逆転、それは天変地異だ。ほとんどの場合、結果には原因があり、明日は今日の地続きにある。ゆっくりと、時間をかけてしか育まれない山を見ていると、そう思う。
また一つ年を経て、目まぐるしく移る日々に区切りがついた。始まったそばから今日の時間が勢いよく過ぎていったが、きちんと育ったことを実感できる二〇二四年にしたい。

帰路で緊急地震速報を聞く。能登半島で最大震度7、暦や生業を問わず、私たちは地上で過ごす生き物であることからは逃げられないのだなあと思う。多くの人が無事でありますように。