作りたいBGMがあったので、キーボードを引っ張り出した。
しばらく格闘したらそれなりに曲っぽいものができ、「私は天才かもしれない」と録音したものの客観的に聞いたら天才ではないことが分かった。そりゃそうだよなと正気に戻った。
作りたいものは作りたいので、果敢にも人の手を借りることにする。こんなの作りたいんだよねって説明するための音源を作りながら、マイクに鼻歌を吹き込みながら、穴に潜りたい恥ずかしさで胸がいっぱいになった。
一人で楽しむ分にはいくらでも天才になれるのに、人目があるとき、自分の一生懸命さや必死さはどうしたって恥ずかしい。理性では「必死だっていいじゃない」と思うが、年月をかけ、自ら育ててしまった性格なのでどうしようもない。自分のことはいつだって恥ずかしい。
お風呂場の鼻歌が気持ちいいのと同じように、あんまり突き詰めず、主観だけで作ったものをふわっと楽しむだけにしておけば、気楽なのにと思う。たまに、こうやって人にも聞いてもらいたい欲求が生まれたときのジレンマが始末に負えない。
鼻歌を歌う。口ずさむたび自意識がチクチク刺激され、穴に潜りたい気持ちになる。天才ではないのでそう頑張らなくてもいいんだけど、必死だっていいんだけど、人に見せるのは恥ずかしいんだけど、でも一緒に楽しめたら嬉しいはずだから。
あれこれ考えながら鼻歌を歌う。我ながら思考回路が面倒くさい。しかし歌い続ければ自意識はどこかに消えることも、私はすでに学習しているのだった。少しだけ頑張って鼻歌を歌う。頑張ってくれよなと思う。