散歩をする、町の景色を見る

世の中にはこんなに酔っ払いがいたのか!

というくらい、町が酔っ払いであふれていた。月も半ばをすぎた金曜で、今夜は特に、解放された気持ちになる人が多いのかもしれない。

先日の散歩に引きつづき、不思議だなあと思う。今日は昨日の地続きのところにあって、人が決めた基準で現状が劇的に変わるわけではないのに、基準の前とあとで、生活は劇的に変わる。

この夏は、涼しい時間に静かな道を歩くのが日課になっていた。少なくない車通りのなか、ときどき虫の声を聞いた。今日、同じ場所を歩いているのに、景色も聞こえる音もぜんぜん違う。

有象無象のいる夜だ。楽しそうに大声で話している集団がおり、その横をストイックに駆けていくランナーがおり、座り込み煙草をふかす人やヨタヨタ散歩をしている私みたいな人もいる。

静かな夜を私は好きだったけれど、今夜、賑やかに道を歩いている人たちは、静かだった間ずっと我慢をしていたのだろうか。家や、ヤミ酒場みたいな場所でひっそりと。「ご時世だからね」なんて言いながら。

出てこられてよかったね、とも、引きつづき気をつけてね、とも思う。

有象無象が集まって、賑やかな夜になる。静かなのも好きだが、うるさいのもうるさいで嫌じゃない。楽しさにはいろんな形がある。どれも正解で、ただいろんな形がある。