見積もりはシビアに、というのが最近の信条である。
サービスでやっておきますね、というのは簡単なのだけれど、心遣いのつもりだったものが「〜してあげたのに」という恨みに似た感情に変化してしまうと、精神衛生に多大な悪影響を及ぼす……みたいな事態に陥ることが多々ある。有限なリソースのうち、私にとって最も大切なのは気力なので、気力の源を傷つけないよう、これはフェアなやり取りだったと自分を納得できるようにしておきたい。
平たく言うと、仕様変更には追加のお見積もりを。
譲歩には対価を、みたいなケチくさい話だ。
フェアなやりとりには、十分な事前説明が欠かせない。「聞いていない」は納得感を著しく損なう。評価は絶対値ではなく期待値から相対的にはじき出されるもので、「聞いていない」には「事前にご説明差し上げたとおり」を返せないと、積み上げてきたものが簡単に爆破されてしまう。
言う必要があることは言わなくてはいけないが、どんどん長くなっていく事前説明に、この頃はうんざりしている。しかし、書類や長文のメールだけでは解決できない問題はそこらじゅうに山積したまま。説明はコストだ、そしてコミュニケーションはパワーだ。
水場に誘った馬が水を飲まなかったからといって、その責を私が負う必要はないが、馬が死んでしまうと不利益を被るのは私なので、水を飲んでもらう努力は力一杯必要なのであった。
合意の形成こそがお仕事の肝、何をするにも胆力が必要な世の中である。嫌われたくはない。
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