私はお前をつれてゆくよ

国境が開き始めている。

飛行機に乗る罪悪感が一気に弱くなった。

長距離を移動することに、罪人のようにビクビクしなくても良いのだ。

予定の合間を縫っては、空の旅を少しずつ再開している。航空券は、ハイシーズンに向けて値上がりの傾向。盛夏は混むし高いけど、6月の飛行機はちょうどいい。

コロナ禍で、ものを手放しすぎたきらいがある。少なさは、身軽さだ。どこへ出かけるにも小さな肩掛けカバン1つで、手というものは塞いではいけないのだと思った。

ここへきて飛行機である。

さすがに3泊4日を、小さなカバンひとつでは過ごせない。しかし、手を塞ぐ荷物は持ちたくない。安心用の折り畳み傘だって、手に握っていたくはないのだ。

愛用していたキャリーバッグを引っ張り出し、掃除をする。放置しすぎたために、持ち手の部分はなんと加水分解でベタベタしていた。その他、良好。思えばこの人といろんな所へ行った。

空っぽのカバンを、コロコロ転がしてみる。2輪のキャスターはスムーズに地面を走る。少しベタついた取っ手を握る、右手。

このカバンがとても優秀なことを、私は知っている。このカバンにたくさんの良いものを詰め込めることだって知っている。

しかし、少し、重い。

正確には、「今の気分には」重い。

悩みに悩んで、キャリーバッグに2泊3日分の荷物を詰めた。手ぶらで行っても、どうせ現地で服を買うのだ。飛行機に乗るたび、間に合わせの服を増やすのも違う気がする。

2泊3日のカバンはスカスカだ。服も、詰めるお土産も、そんなにない。

「ビフォー」と比べたら明らかに軽いけれど、スタスタ歩くにはまだ少し重い。

アフターとぼんやり混ざり始めたウィズの時代、旅もまだ調整中であるわけで、繰り返しによりもっと最適に近い答えが見つかるわけで、きっとそれなりの、落ち着く形の旅が生まれていくのだと思う。

使うものもスケジュールも、行く場所、会う人、全部少しずつ調整しつつ。調整が終わったとき、身軽な両手は何を持っているのでしょうね。

優秀なキャリーバッグ、移動の象徴であったもの。ひとまず今日、私はお前を連れてゆくよ。

暑いくらいだと思う。毛布に包まる

羽毛ぶとんを出した。ポカポカして暑いくらいで、びっくりしている。羽毛ぶとんは暖かい。

年が明けてまた戦々恐々とする暮らしが始まったが、第6波が引いていく気配が全くない。

このまま高め安定で2022年が進んでいくんだろうか。う〜ん。

今年は行きたい場所もやりたいこともたくさんあるので、少しずつ外に出て行くつもりだったんだけれども。

不満や不安を環境に訴えても仕方がないので、暖かい布団で静かに寝る。

寝転がりながら、半袖短パンで心なしか汗をかいている。羽根の力って、すごい。

仕事が要る、地面に足をつける

田舎に行ってきた。

その町が田舎だとは思っていなかったのに、行ってみたら田舎になっていた。びっくりした。

この道はこんなに狭かっただろうか、この林はこんなに荒れていただろうか。訪れたのが冬で、どんより曇っていたのがまた悪かった。

まるで時代の風に吹き残されてしまったような、昭和や平成をこびりつかせた建物が、古ぼけて残っていた。町並みを眺めては、もの悲しくなる。住んでいる人からしたら、余計なお世話だろうが。

この町で、私はこんなに寂しかっただろうか。

さびれた街並みのなか、高級なホテルと市役所だけが新しかった。ピカピカのターミナルで次の便を待ちながら、この町には仕事が必要なんじゃないかと思う。仕事、人の流れ、経済だ。

それこそ大きなお世話か。この町で暮らすなら、きちんと自分で動かせる仕事が必要だと思う。私が暮らすなら。

寂れた町がこんなにも悲しいのは、私がここで暮らしたいと思っていたからだった。

とりとめもなく仕事について考えてみるけど、そもそも、寂れていく町に暮らしたいのはなぜだろう。

何もかもが不必要な、大きなお世話で余計な行動なんじゃないかと思う。でも多分、生きるって必要ないことの集合だ、きっと。

時間が溶ける、バーチャルな友達とつながる

友人に「今度そっちに行くよ」と言うと、「何年ぶりかな?」と聞かれる。

数えてみると、丸2年ぶりだった。

よく遊んでいる気がしていたけど、あの思い出やあの会話は、すべてネット上の出来事だった。びっくりした。

飛行機に乗ればすぐにだって会える。アプリを開けば、いつでも話せる。近い気がしていたけど、2人してとても遠い所にいた。

それでも2年もの間、まめにコミュニケーションが続いたことに驚いている。「私たちバーチャルな関係だったのね」と言い、二人して笑った。

バーチャルでも友達でいられる。リアルで顔を合わせたとして、別に手を繋ぐことも一緒に寝ることもなく、彼女とは、画面越しのと全然変わらない会話をするのだと思う。

友人に会えるのは嬉しい。会うことの意味って何なんだろう。物理的な距離が近づいたとして、交わす情報に劇的な変化はない気がしている。

今日は久しぶりにペンタブレットを起動する。気付いたらこんな時間になっており、1日が短すぎて、焦る。

寒くて震えている、髪を伸ばそうと思う

家の外で仕事をすることが増えてしまった。

しばらく移動することはないと思っていたので、ノートパソコン含め、お出かけグッズを手放してしまった後だというのに。自分のやりたいことなので致し方なく、再び環境を整えることにする。

「スマホがあれば仕事ができる」ってホリエモンが言ってたけど、スマホのみで一泊二日を過ごすのは厳しかったので、まずはノートPCを購入したい。

あと、かばん。

1 1泊分の着替えが入ること

2 一眼レフのカメラとレンズが1本入ること

3 三脚(折りたたんで40センチ位)が入ること

4 B5サイズのノートが入ること

5 フェイスタオルが1枚入ること

6 ノートPCかタブレットが入ること

7 外付けのマウスとキーボードが入ること

を、満たすかばん。

肩が軽い生活にすっかり慣れてしまい、本当はタブレットやノートPCは持ち歩きたくない。1キロ未満の、薄くて軽いPCを探そうと思う。そしてキーボード類は有線がいい。少し嵩張るし格好悪いけど。無線はまだちょっと遅いことが分かったのが、おうち時間の収穫だった。

というわけで、ずっと気になっていたミレストのかばんを巡回している。
カメラまで詰めてしまうには、ちょっと小さいかなあ。

ステイホームからずっと髪を短くしていたのだけど、再び外に出るようになって、冬が寒いことを思い出した。

来年は髪を伸ばそうと思う。暖かく、軽く、また色々な所に行けたらいい。とても浮ついている。